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~PaPiTaMuSiCaのブログ~

Yotam Silberstein ヨタム・シルバースタイン& Carlos Aguirre カルロス・アギーレ 『 En el jardín エン・エル・ハルディン』その1

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Yotam Silberstein ヨタム・シルバースタイン& Carlos Aguirre カルロス・アギーレ

『 En el jardín エン・エル・ハルディン』

 

待望の新音源がなんとこのコロナ禍の厳しい折に、円盤(CD)で2/19日本先行発売です。

 

現代アルゼンチン音楽の心の師であるカルロス・アギーレと南米音楽をこよなく愛するイスラエルテル・アビブ出身N.Y.を活動拠点とするギタリスト・作曲家ヨタム・シルバースタイン。

二人がこのドゥオ・プロジェクトのためにそれぞれ4曲ずつ書き下ろした新曲のみを束ねたのが本作です。レコーディングからミキシングやアートワークなど全てパラナのスタッフによるカルロス主宰のシャグラダ・メドラ・レーベルで行われ、情感あふれるヨタムのエレキ・ギターと、その他楽器の全てをカルロスが担当、ピアノ・キーボード・アコーディオンをメインで演奏のほか来日公演でも披露したフラットレスベースやギターさらにはパーカッション、バス・フルートも演奏する多才ぶりを発揮しています。全編ほぼインストゥルメンタルですが、1.ではヨタムの、5.ではカルロスのヴォーカルも聞けるなど彩り豊かなアルバムに仕上がっています。ジャケットとブックレットにはカルロスが追い続けた、風景・植物・花・樹木の写真が収められており、彼の日常にある自然や小さきものを慈しむ視点が感じられる仕様です。

 

www.youtube.com

 

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“エン・エル・ハルディン(庭で)” / ヨタム・シルバースタイン&カルロス・アギーレ
"En el Jardín" / Yotam Silberstein & Carlos Aguirre

  1. Fairytale [Yotam Silberstein] 4:53
    おとぎ話 [ヨタム・シルバースタイン]
  2. Nuevos viejos amigos (a Yotam Silberstein) [Carlos Aguirre] 4:52
    新しくも古き友人たち(ヨタム・シルバースタインに捧ぐ)[カルロス・アギーレ]
  3. João [Yotam Silberstein] 3:47
    ジョアン[ヨタム・シルバースタイン]
  4. En el jardín [Carlos Aguirre] 4:31
    庭で[カルロス・アギーレ]
  5. Ga’aguim [Yotam Silberstein] 3:32
    ガァグイン(懐かしいきもち)[ヨタム・シルバースタイン]
  6. Paisaje imaginario [Carlos Aguirre] 4:22
    想像上の風景 [カルロス・アギーレ]
  7. Madrugada [Yotam Silberstein] 5:36
    夜明け前[ヨタム・シルバースタイン]
  8. Tanto para agradecer (a Iván Lins) [Carlos Aguirre] 5:19
    感謝すべきことは沢山ある(イヴァン・リンスに捧ぐ)[カルロス・アギーレ]


Duración total : 37 minutos (全37分)
[Shagrada Medra – Inpartmaint シャグラダ・メドラ-インパートメント]

※上記訳はPaPiTaMuSiCaによるもの。

 

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プロジェクトのきっかけは6年前の2015年から。セロニアスモンク・ギター・コンペティションでファイナリストとなり奨学金を得て、2005年N.Y.ニュー・スクールに入学した経歴をもつヨタムは知られざるギター大国であるブラジルやアルゼンチンの音楽に傾倒しており、2011年自身の名義でその名もずばり『Brasil』しており、のちのインタビューで「エグベルト・ジスモンチやエルメート・パスコアールとカルロスの音楽を特に敬愛していた」と言及しています。ソロ・プロジェクトでカルロスがアメリカ訪問する事を知ったヨタムは、彼に自宅での食事に招待したいとメールを送ったそうです。スケジュールの関係で食事は実現しませんでしたが、そのメールがきっかけでカルロスがN.Y.へ行く事になり、様々な偶然と友人たちの協力によって二人の共演が実現しました。以下はその貴重な映像です。


youtu.beCarlos "Negro" Aguirre & Yotam Silberstein - Milonga Gris
Why not cafe, NYC May 29, 2015

 


2014年ヨタムがブエノスアイレス・ジャズ・フェスティバルに招へいされた時かその前後に「ミロンガ・グリス」と出会い、そこから1年を経てN.Y.で奇跡の共演へと発展し、二人の間に芽生えた友情はゆっくりとはぐくまれ、2017年にはアルゼンチンで企画された”ドゥオ・シリーズ”の一組として首都ブエノス・アイレス、サンタフェ、およびトゥクマン・ジャズ・フェスティバルで共演しています。

「ミロンガ・グリス」はヨタムのカルテットによる演奏で5作めのアルバム「The Village」 (2015)に収録されています。

 

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このような経緯ののち、お互いの新曲を出し合うドゥオ・ツアーを実現しようと話が発展し、アメリカとアルゼンチンをつなぐメールでの往復書簡による曲制作がスタートしました。しばらくは進展せずにいましたが、突然届いたヨタムの1曲めからインスピレーションが広がりその後は全8曲の新曲が出揃ったのだそう。

 


2018年ドゥオでツアーする事が決定してからは、多くの仲間の協力でプロジェクトが動き、ブエノス・アイレス、ラプラタ、ラファエラ、パラナの全4カ所で初のドゥオによるアルゼンチン・ツアーを実施し各地で盛況となり、カルロスの暮らすエントレリオス州パラナでのレコーディングへと結実しました。

本作はそのような背景の下、生まれた珠玉のアルバムです。

 

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パラナ川を望む(2019) ©Masayo Tanimoto / PaPiTaMuSiCa

 

私たちPaPiTaMuSiCaでは遡ること6年前の2015年4月からFacebookタイムライン(TL)のカルロスUSA渡航旅ログで二人の交流に注目していたので、待望のアルバム完成のニュースでした。東京JAZZや Seiko Jazz Camp、その他自身のバンドツアーで2013年から何度も来日経験のあるヨタムが、このドゥオでいつか来日してくれるのではと期待していたのが具体的に実現するかもしれません。(コロナ禍がおさまった時ぜひ真っ先に招へいしてほしいです)


これは余談ですが、2015年「ピアノ・エラ」で初来日したアンドレス・ベエウサエルト Andres Beeuwsaert(=アカ・セカ・トリオ)&フアン・パブロ・ディ・レオーネ Juan Pablo Di Leoneの二人が日本ツアーの最後の時間を我が家で過ごし、その帰路途中N.Y.に立ち寄って現地ミュージシャンと共演すると話していたのですが、その共演相手がヨタムだったのです。Youtubeでその時の演奏が一本のライブとして映像でご覧になれますので宜しければチェックしてみて下さい。N.Y.らしいロフトの空間でアンドレス&フアンピによるアルゼンチンのみならずブラジル、ポルトガルにも及ぶレパートリーにヨタムのエレキ・ギターの柔らかで巧な音色が加わり最後はアギーレのミロンガ・グリスでの拍手喝采、アンコールへとこの3人での演奏が違和感なく調和して、ヨタムがこよなくアルゼンチンやブラジルなど南米音楽を愛している事がひしひしと伝わって胸に響くものがあります。

 

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イスラエル✖南米のコンテンポラリー・ジャズの組合せと言うと、来日ツアーも行ったシャイ・マエストロとカミラ・メサとのドゥオが思い出されます。ヨタムと同じNYニュースクールで学んだカミラ・メサと、ヨタムと同じイスラエル出身で同様に奨学金を得てNYで学び、拠点を移すなど共通する経歴をもつシャイ・マエストロ。2016年の名古屋公演を聴きに行きましたが、それ以前からヨタム&アギーレの共演が気になっていた私は二人によるライブに少なからずある種の期待を抱いていました。シャイの卓越した美しい旋律と力強いピアノ演奏は印象的でしたが、その時のカミラ・メサは少し疲れていた様子で、特別なインパクトや南米らしさは感じなかったのが正直な印象でした。公演後もゆっくり話せるような雰囲気ではなかったです。

話を本作に戻しましょう。アルバム発売日の2/19から一週間ほどの間、期間限定でシャグラダ・メドラより本作のアルバム・メイキング・トークを含む映像がYoutubeで公開されていました。ヨタムはそこでは流暢なスペイン語を話していました。「お聞きぐるしいスペイン語ですみません」と当人はコメントされていましたが、6年前から勉強し始めたとは思えない流暢さでイントネーションも正確です。一方カルロスも「拙い英語」と言及するなど元々語学はあまり得意ではないのですが、二人の共演からはそれらを超越したような親和性の高い通じ合った演奏を聴くものに感じさせます。互いを尊重しながら寄り添うような、温かく包まれる音世界。それは愛する異国のアーティストたちとの友情を深め、より良いコミュニケーションをしたいというヨタムの熱意と、それに応えようとするカルロスの敬意が表れているのでしょう。二人のスペイン語による言葉が日本語対訳字幕付きでまるでコンサートを楽しむかのような時間でした。
(このメイキング映像、現在は残念ながら見られません。また映像字幕対訳は当方によるものではありません。)

 

二人のプロフィールと本作収録曲の解説は、次回でご紹介します。

お楽しみに。。。

(文責:PaPiTaMuSiCa 谷本雅世)

 

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